下肢静脈瘤の治療

下肢静脈瘤とその治療法について

人間の血管には,心臓から血液を全身に送る動脈と,全身をめぐった血液を心臓に返す静脈とがあります.下肢の静脈には足の深いところを通る深部静脈と表面を通る表在静脈とがあり,それらが随所で交通枝により連結します.正常な状態では血液は下から上へ,外から内へ流れて心臓に戻ります.

しかし下肢の静脈は重力に抗して血液を戻す必要があるという性質上,重力の影響を受けて逆流(血液が足の方向に戻る)しやすくなっています.

下肢静脈瘤は,長期の立ち仕事,妊娠出産,肥満などにより表在静脈や交通枝に逆流が起こることにより,静脈が徐々に膨らんで「こぶ(瘤)」のようになった状態をいいます.この状態が長く続くと外観が悪くなるのはもちろん,むくみ,だるさ,こむらがえりや,かゆみ・湿疹などを伴う皮膚炎が生じ,進行して皮膚潰瘍が出来ることもあります.性別では女性に多く,また遺伝素因もあるといわれています.

下肢静脈瘤には図のように3種類のタイプがあります.

「伏在静脈瘤は,下肢の内側やふくらはぎを走る太い表在静脈である「大伏在静脈」や「小伏在静脈」に逆流が起こるタイプで,だるさやむくみなどの症状が最もでやすいタイプです.
上右の図は,大伏在静脈に下肢静脈瘤ができる場合を示しています.

「網目静脈瘤」「クモの巣状静脈瘤」は,さらに表面を走る非常に細い静脈に逆流が起こるタイプで,疼痛などの症状が出ることもありますが,主に美容上気になる方が多いようです.

伏在静脈瘤

伏在静脈瘤


網目静脈瘤

網目静脈瘤


クモの巣状静脈瘤


※写真は「ALCARE 株式会社メディカルブックシリーズ」より
静脈瘤の治療を必要とするのは,上記のような症状があるときや,静脈瘤そのものが美容上・外観上気になるときです.
治療方法には以下の方法があります.

(1) 保存的治療法

生活改善,弾性(弾力)ストッキングなど.
軽度の下肢静脈瘤の場合はこれで経過観察することも可能です.なお悪化をある程度防止させますが,完全に消失させることはできません.

(2) 硬化療法

局所麻酔のもと,静脈内に細い針で硬化剤(ポリドカスクレロール)を注入して,静脈瘤の内部を固めて消失させる方法です.「網目状静脈瘤」「クモの巣状静脈瘤」のような細いタイプ,伏在静脈瘤でも末梢の細い部分などに有効です.

術前に必要な検査は血液検査のみです.
治療の曜日は特に決めておりませんが,通常は午前診終了後あるいは午後診前に行い,治療時間は約20~30分です.

当日は特殊なスポンジで圧迫します.翌日からは,術後の深部静脈血栓症を予防するため,弾性ストッキング(お持ちでない方は,当院で医療用のものを販売しております)を術後,最低日中のみ約1か月履いていただきます.
静脈瘤の程度によっては治療が複数回必要な場合もあり,その場合,各治療日の間隔は 最低1週間以上あける必要があります.
 約8,000~10,000円(初回治療) ※複数回の治療を要する場合は,2・3回目は手術料は発生しませんので安くなります.

(3)手 術

ストリッピング(静脈抜去術)

ふともも部分の大伏在静脈を抜き取る手術で,再発が少ないスタンダードな方法です.以前は入院が必要でしたが,最近は日帰り手術が進歩しました.TLA麻酔という特殊な局所麻酔法を用い,専用の器具(ストリッピングワイヤー)を用いて安全に痛みも少なく抜去できます.膝より下の瘤状変化のひどい部分は約2mm大の小さな傷数か所で直接切除して(stab avulsion法),外観もできるだけきれいにします.ただこの方法は最近ほとんどが下記の血管内焼灼術にとって代わられつつあります.

血管内焼灼術(レーザー治療,ラジオ波治療)

最近は下肢静脈瘤に対するレーザー治療やラジオ波治療が急速に進歩,普及しております.大伏在静脈,小伏在静脈に特殊なファイバーを挿入して内腔を焼灼して塞いでしまう治療で,切開や抜去の必要性が少なく治療時間も短縮されます.このためここ最近はこの方法が主流となっています.

当院では施設基準やマンパワー等の理由で以前のように手術を行っておりませんので,手術が必要と診断した場合は信頼のおける医療機関にご紹介差し上げます.

 

       
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