下肢静脈瘤の日帰り手術

 当院では,下肢静脈瘤に悩む方のために,入院の必要のない日帰り手術を行っています.豊富な臨床経験をもとに,できるだけ痛みが少なく再発の少ない方法を採用していますので,ぜひご相談ください.

 なお,下肢静脈瘤の診察や説明,検査などには他の患者さんよりも時間がかかりますので,初診の方は事前にお電話で予約してください.予約なしで来院された方は,長時間お待ちいただくこともあることをご了承ください.

下肢静脈瘤とその治療法について

 人間の血管には,心臓から血液を全身に送る動脈と,全身をめぐった血液を心臓に返す静脈とがあります.下肢の静脈には足の深いところを通る深部静脈と表面を通る 表在静脈とがあり,それらが随所で交通枝により連結します.正常な状態では血液は下から上へ,外から内へ流れて心臓に戻ります.

 しかし下肢の静脈は重力に抗して血液を戻す必要があるという性質上,重力の影響を受けて逆流(血液が足の方向に戻る)しやすくなっています.

 下肢静脈瘤は,長期の立ち仕事,妊娠出産,肥満などにより表在静脈や交通枝に逆流が起こることにより,静脈が徐々に膨らんで「こぶ(瘤)」のようになった状態をいいます.この状態が長く続くと外観が悪くなるのはもちろん,むくみ,だるさ,こむらがえりや,かゆみ・湿疹などを伴う皮膚炎が生じ,進行して皮膚潰瘍が出来ることもあります.性別では女性に多く,また遺伝素因もあるといわれています.

    

 下肢静脈瘤には図のように3種類のタイプがあります.

 「伏在静脈瘤」は,下肢の内側やふくらはぎを走る太い表在静脈である「大伏在静脈」や「小伏在静脈」に逆流が起こるタイプで,だるさやむくみなどの症状が最もでやすいタイプです.
 上右の図は,大伏在静脈に下肢静脈瘤ができる場合を示しています. 

  「網目静脈瘤」「クモの巣状静脈瘤」は,さらに表面を走る非常に細い静脈に逆流が起こるタイプで,疼痛などの症状が出ることもありますが,主に美容上気になる方が多いようです.

伏在静脈瘤

伏在静脈瘤

網目静脈瘤

網目静脈瘤

クモの巣状静脈瘤

クモの巣状静脈瘤

※写真は「ALCARE 株式会社メディカルブックシリーズ」より

 静脈瘤の治療を必要とするのは,上記のような症状があるときや,静脈瘤そのものが美容上・外観上気になるときです.

 治療方法には以下の方法があります.

(1)保存的治療法

 生活改善,弾性(弾力)ストッキングなど.軽度の下肢静脈瘤の場合はこれで経過観察することも可能です.なお悪化をある程度防止させますが,完全に消失させることはできません.

(2)硬化療法

 局所麻酔のもと,静脈内に細い針で硬化剤(ポリドカスクレロール)を注入して,静脈瘤の内部を固めて消失させる方法です.「網目状静脈瘤」「クモの巣状静脈瘤」のような細いタイプ,伏在静脈瘤でも末梢の細い部分などに有効です.

 術前に必要な検査は血液検査のみです.
 治療の曜日は特に決めておりませんが,通常は午前診終了後あるいは午後診前に行います.
 治療時間は約20~30分です.

 当日は特殊なスポンジで圧迫します.翌日からは,術後の深部静脈血栓症を予防するため,弾性ストッキングを術後,最低日中のみ約1か月はいてください.お持ちでない方は,当院で医療用のものを販売しておりますのでご購入ください.

 静脈瘤の程度によっては治療が複数回必要な場合もあり,その場合,各治療日の間隔は 最低1週間以上あける必要があります.

(3)手 術

 ストリッピング(静脈抜去術)

 ふともも部分の大伏在静脈を抜き取る手術で,再発が少ないスタンダードな方法です.以前は入院が必要でしたが,最近は日帰り手術が進歩しました.
 TLA麻酔という特殊な局所麻酔法を用い,専用の器具(ストリッピングワイヤー)を用いて安全に痛みも少なく抜去できます.
 膝より下の瘤状変化のひどい部分は約2mm大の小さな傷数か所で直接切除して(stab avulsion法,外観もできるだけきれいにします.

◆ 高位結紮術

 局所麻酔のもと,逆流している部分だけを外科的に切断する方法です.
 逆流は表在静脈と深部静脈との合流部分(鼠径部)や,交通する部分(大腿など)に起こりやすく,その部分を直接切断します.結紮術という手術名ですが,実際は完全に離断します.
    ごく軽度の静脈瘤や小伏在静脈領域(ふくらはぎ)の静脈瘤に対しては,この方法も選択枝です.

     

<手術のスケジュールについて>

 術前に必要に応じて胸部レントゲン,心電図,血液検査を受けていただき,看護師よりスケジュールや弾性ストッキングの説明をいたします.
 手術には切開部分を決定するための超音波検査が必要です. 検査は専門の検査技師が行います.あらかじめ月数回の検査日がありますので,都合のよい日に受けてください.
 手術は,検査日の翌日以降,原則として木・土曜日以外の午後1時ころから行います.

 ー検査日ー

 超音波検査を受けていただき,切開予定部分(数か所)にマーキング(マジックで印をつける)を行います.検査は20分くらいです.

 手術日

   仰向けまたはうつぶせの体位で手術をおこないます.手術は60分程度です.
 術後は15分ほどの安静後,飲み薬(抗生物質と鎮痛剤)の処方箋を受け取ってからご帰宅ください.その後の通常の日常生活はほぼ問題なくできます.
 また,院長の携帯電話番号をお教えいたしますので,不安なことがあれば,診療時間以外でも遠慮なくご連絡ください.

 術後1~2日後

 創部の観察を行います.  弾性ストッキングは,術後の深部静脈血栓症を予防するため,この日から最低日中のみ約1か月半はいて下さい.
 多少水にぬれても問題ありませんし消毒も不要ですが,いちおう抜糸までシャワー浴のみとします.

 術後約1週間後~

 抜糸を行い,問題なければ治療が終了します.入浴も可能です.
 なお,術後3-4週間後ご都合のよい時に経過観察のために再診してください.

<手術の料金について> 

 いずれの治療も健康保険が効きます.
 下記は,診察,検査,手術,投薬,術後処置などを含めた典型的な場合で,3割負担の方の自己負担分の料金です.よって,1割,2割負担の方はそれぞれその1/3,2/3となります.
 また,料金は片脚についてのものです.
 ただ,患者さんの状態,投薬内容,通院回数などにより個人差があることをご了承ください.

 静脈抜去術  約40,000円
 高位結紮術  約20,000円
 硬化療法   約8,000~10,000円(初回治療)
  *硬化療法で複数回の治療を要する場合は,2,3回目は手術料は発生しませんので安くなります. 

レーザー治療について(ラジオ波治療も含めて)

 最近は下肢静脈瘤に対するレーザー治療やラジオ波治療が急速に進歩,普及しております.大伏在静脈,小伏在静脈に特殊なファイバーを挿入して内腔を焼灼して塞いでしまう治療で,切開や抜去の必要性が少なく治療時間も短縮されます.このためここ最近増加した下肢静脈瘤の専門クリニックを中心にこの方法が主流となっています.
 ただ,下腿の瘤状に変化した部分はレーザーだけでは完治できず,上述したような切除方法(stab avulsion法)の追加が必要なことには変わりはありません.
 またあまりにも太い静脈や蛇行した静脈でもレーザー治療では治療できない場合もありますので,ストリッピング手術が全く不要になったわけではありません.
 さらにクモの巣状,網の目状静脈瘤にはレーザー治療はできませんし,一部の美容外科などでは行っているようですが健康保険は使えず高額です.
  なお治療成績や再発率などについてはストリッピング手術とほとんど変わりはありません.
 
 当院では施設基準やマンパワー等の理由でレーザー治療は行っておりませんので,レーザー治療をご希望される方は,信頼のおける医療機関にご紹介差し上げますので,遠慮なく申し出てください.